心理学者の河合隼雄氏の著書によれば、
「人の心の中には、実在の父親・母親を超えて
父なるもの・母なるものが存在する」のだそうです。
皆さんは、それらが自分の心に在ることを実感したことはありますか?
子どもは、身の回りの世話をしてもらったり
話を聴いてもらったり
大泣きすれば抱きしめられ、
間違ったことをしたり、ふざけて危険な目に遭った時はこっぴどく叱られたりしながら
自分の命を生かしていく為に
また、他者と良い関係性を築いていく為に欠かせない愛情や厳しさを与えられます。
でも、どの時代にもそれぞれに困難な問題が潜んでいて
親となった全ての人が
健全な心の状態で子どもに関わる事が難しいのが現実です。
昨今、胸が痛く苦しくなるような家族の事件が相次いで起きていますね。
特にそれが親子関係によるものである時、
私たちは「親の育て方が悪かったからだ」と
つい決めつけたくなるのではないでしょうか。
もしかすると、それがひとつの原因として挙げられるケースもあるかもしれませんが
「悪い者探し」は、それをする人の心が安心したいが故にするものです。
私は、そのようなニュースを見る度に
親としての自分の姿や、1人の大人としての人間性を振り返ります。
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子供の頃に必要な親の愛情を与えられなかった心の傷の痛みは
ある程度年齢を重ねてから、様々な症状として表れることがあります。
傷が深ければ深いほど
怒りが大きければ大きいほど
人は苦しみの闇に留まり、自分の心に深く傷をつけた相手を責め続けます。
その対象は親に限らず、パートナーや身近にいる友人である場合もありますが
目の前に、自分の人生をより良く生きていくための選択肢が幾つか並んでいたとしても
共依存等の根深い関係性の問題や甘えによって
「相手が悪いのだから、自分の不快感情や幸せの責任を取ってもらうのは当たり前」という思考から抜け出す事が出来ない。
しかしその思考のもう1つ奥には、自分を信頼して生きていくことへの強い恐怖心があって
成長のための変化を拒んでいるという事も考えられます。
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「相手が全部悪い」は、
子どもの心の在り様に似ています。
子どもは、自分の不注意が原因で転んでも
「ママのせいだ!」と言って怒る事があります。
親が自分の思うように動いてくれないと
暴れてでも分かってもらおうとします。
そんな時
「気を付けてと言ってあげれば良かったね」
「~したいんだよね。でも○○○だから△△△しようか」などのように、根気強く気持ちを受け止めてもらったり
常に聖母のような優しさを示せなくたって、
肝心の「あなたの事が大好き」という思いが子どもにちゃんと伝わっていれば
自然と子どもの心には
「この私で大丈夫」という安心感や、自分を律する力が養われていくものだろうと思います。
私はカウンセリングによる対話を通して、
「父」と「母」のパートを育てていたことを後になってから気づきました。
私の経験上ではありますが
絶望のどん底にいる時の自分をも信頼し
希望を持って生きる力を心に見出す事は、不可能ではないと思います。
ただその為には
目の前の問題を、一度自分自身の問題として見つめる覚悟が必要です。
怒りも恐怖も悲しみも抱えたまま顔を上げて
勇気を持って今いる人生の現在地を知り
遠回りに思えても、今のあなたにとって本当に必要な道を歩むうちに
なかなか思う通りにいかない自分の不完全さを許し受け入れるような母性と
人生に責任を持って生きていくための父性が心に育まれることによって、
やがては、自分らしく生きていく力(=自我)が確立するのかもしれません。
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カウンセリングというのはクライアントの話を聞き続けるものですが
特に子どもの頃、自分の話を聞いてもらったり、十分な関心を得られた経験が無かった人にとって
信頼出来る他者にありのままの思いを聞き切ってもらうという体験は、想像する以上に心の癒しに繋がるのではないかと思います。
どんな人とのご縁も大切で必要不可欠ですが、恐らく誰よりもあなたが出逢いたいのは
良い時も悪い時も決して見捨てる事なく、可能性を信じて成長しようとする自分自身なのではないでしょうか。

参考文献:『父親の力・母親の力』河合隼雄(講談社)
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